MESSAGE

学府長からのメッセージ

「仕事ができる」リーダーを育成する課題基幹部局 地球社会統合科学府長 / 松井 康浩

未来共創リーダー育成プログラムの狙いは何か。私見を述べれば、「仕事ができる」リーダーの育成ということに尽きる。ここでいう「仕事ができる」とは、各所で生じる問題に対して、様々な知識や実践知を組み合わせて解決策を提案し、課題の解消へと導く能力を意味するだろう。問題解決は一人では困難だから、他者を巻き込み、集団を率いる能力も不可欠になる。本プログラムは、「地域共生」「危機管理」「文化・健康」という三つのアジェンダを、私たちが直面する主要な課題領域とし、課題解決にアプローチする「仕事ができる」人材を育成しようというものだ。

30年以上前の大学院で学んだ経験に照らすと隔世の感を禁じ得ない。当時の大学院では、関係する学問分野(discipline)の教員が数人いて、毎週それぞれのゼミが開かれ、当該分野の古典や研究書を事前に読み、各回の担当者が用意したレジュメを下に議論を交わすのが常態だった。半年に一度、ゼミや研究会の場で各自の研究の進捗状況を報告し、批判やアドバイスを受けることもあった。おそらく文系の大学院であればどこも似たり寄ったりだったろう。もちろん、この地味な作業は軽んじられない。アカデミズムの手法を学ぶ伝統的なスタイルとして、数多くの研究者・大学教員を輩出するのに寄与してきたからである。ただ、「仕事ができる」人材育成には直結しないだろう。アカデミズムの再生産は不可欠だが、今の大学院はそれだけでは世の中のニーズに応えたことにはならない。

近年、日本の大学院は大きく様変わりした。九州大学にも複数設けられた博士課程リーディングプログラムはその代表例である。未来共創リーダー育成プログラムは、その流れを継承・発展させて、協働課題解決のための政策の立案・設計・実施ができる人材養成を目指している。本プログラムは副専攻型のプログラムだから、学生は主専攻にあたる各学府でそれぞれの専門分野や関連分野を究めつつ、このプログラムで学際的、実践的な課題解決アプローチをも学ぶわけである。

本プログラムに参画する教員は、アカデミアに一つの軸を置きながらも、現場の課題やフィールドに関わる経験豊富な、いわば大いに「仕事ができる」方々である。本プログラムのメニューや各教員との実践的交流を通じて、「仕事ができる」修了生が多く巣立つことを期待したい。

プログラムリーダーからのメッセージ

ミドルパーソンへの期待地球社会統合科学府・教授 / 三隅 一人

未来共創リーダー育成プログラムは、明日の世界を共に創る、そのための理念とそれに至る道筋を探求することを目的とした、学府横断的な副専攻型のプログラムである。
誰にとっても(子孫を含めて)幸せな社会を創るためには、多くのさまざまな課題を解決しなければならない。それらの課題は、深刻であるほど複合的な問題を含んでいる。ある問題の解決が、別の側面で新たな問題を生み出すこともある。予期せぬ事を含めたさまざまな条件やその変化によって、最善の道筋をとれないこともある。そうした現実のなかで悶々と探求される理念と道筋を、本プログラムは「ポリシー」と称して、教育のキーワードに据える。

大学院プログラムとして、ポリシーの探求は高度な専門性に足場をおいてなされる。
一方で、複合的な現実課題を解決するために必要な学知は、狭い専門を越えたところにある。本プログラムは、学府横断的な学際的アプローチとともに協働の営みをもって、その学知の創造に挑む。そうして本プログラムが育成を目指すリーダーは、ミドルパーソン型の人材である。「ミドル」とは、複数の異なる専門をつなぐ意味であり、そして何よりも、学問と現実的な課題解決をつなぐ意味である。

村上陽一郎博士は、「寛容」の現代的意義を論じるなかで、「唯一の解を求めない」、より積極的にいえば「less conflictual solutions(より摩擦の少ないと思われる解)を求める」、そうした姿勢の重要性を説いている(『文明のなかの科学』青土社,1994)。
必ずしも互いに整合しない、時として対立し合う、複数の価値理念のあいだで課題解決を行うことの難しさは、巨大災害やコロナ禍に際してわれわれは痛いほど体験している。
そうした事態にこそ、唯一の解を求めないポリシーを専門性をふまえて分析的にデザインし、明日の世界をリードするミドルパーソンの存在が問われる。一日も早く、本プログラムの修了生がそうしたミドルパーソンとしてさまざまな分野で活躍する姿を期待したい。

PROGRAM

プログラム概要

東日本大震災をはじめとする災害、SARS や新型コロナウィルスなどの感染症の流行、AI 等の科学技術進歩による社会の変化、中国等の新興国の台頭による政治・経済秩序の変化等、21世紀に入ってからも人類はさまざまな課題に直面しています。これらの諸課題の解決に、学術と人材育成の面から応えることが、今まさに大学に求められています。そのためには、専門の枠組みを超えて、現実世界が直面している課題によりそくした研究や人材育成のモデルを構築し、大学の学知がより直接的に社会に貢献できるようにすることが重要です。
この要請に応えるべく、<課題解決のための方策の立案・実施・評価の科学的支援>を趣旨とする本プログラムが整備されました。高度に幅広い専門性から未来社会を構想し、オールラウンドな協働課題解決と決断、政策の立案・設計にあたることができる研究者および高度専門職業人を養成します。 カリキュラムは多様な学府から提供される科目からなり、所定の単位を修得したプログラム修了者には、修了証明が交付されます。

博士前期課程から博士後期課程までの最長5年間の副専攻型のプログラムとして、プログラム学生は、自身の専門(所属学府)を足場にしつつ、複数の専門分野にまたがる複合的な現実問題を解決するための実践的な課題探求を行います。

協働課題解決やフィールドワーク、政策の分析・策定に関する一般的な訓練を積むとともに、研究課題に応じて多様な分野の教員から指導を得ることで、課題を効果的に探求します。 研究課題を進めるうえで必要となる専門分野の観点を知る手がかりとして、3つのアジェンダ「地域共生」、「危機管理」、「文化・健康」を大枠とし、それぞれに中領域的な「課題領域」が配置されています。
複数の「課題領域」、そして複数のアジェンダ(専門分野)にまたがる課題研究を行うことが推奨されます。